東京高等裁判所 昭和53年(ラ)1240号 決定 1979年7月17日
抗告人 明治通商株式会社
右代表者代表清算人 木許隆
右代理人弁護士 河野曄二
主文
本件抗告を棄却する。
理由
第一抗告の趣旨
原決定を取り消し、更に相当の裁判を求める。
第二抗告の理由
末尾に添附した即時抗告申立書記載の抗告理由のとおり。
第三当裁判所の判断
一 記録によれば、昭和五三年一一月一四日の本件不動産競売期日通知書は、同年一〇月二四日に、埼玉県入間郡三芳町大字北永井四四一番地明治通商株式会社代表取締役新井正躬あてに発送されている事実が認められる。右の時点において、既に新井正躬が明治通商の代表者でなく木許隆が代表清算人に選任されていることは抗告人主張のとおりであるけれども、明治通商の本店所在地は、登記簿上埼玉県入間郡三芳町北永井四四一番地であったことは記録上明らかであるから、前記通知書は、被送達者の所在及び名称の表示に欠けるところはなく、単に代表者名の記載を誤ったに過ぎず、競売法第二十七条第二項所定の通知として有効である。
二 また、昭和五三年一月二六日の第一回競売期日通知書が前記の住所にあてて発送され、転居先不明で配達されなかったことは抗告人主張のとおりであるけれども、昭和五三年六月二〇日の第二回競売期日通知書は配達されており(このことは右通知書が「転居先不明」で返送されていないこと及び抗告人が債権者とともに右競売期日の変更申請を提出していることから明白である。)、従って、原審が第三回目の本件競売期日通知書を前記住所にあてて発送したからといって、右通知書が抗告人に到達しないであろうことをあらかじめ認識していたとはいえないから、この点に関する抗告人の主張も理由がない。
なお、抗告人は、右競売期日の通知を受領したとすれば、早急に債権者と任意弁済につき協議するなどの対策を講じ、本件競売を免れ得た筈であるとして、右通知書の不到達の違法をいうけれども、本件競売申立当時の抗告人の代表者は代表取締役新井正躬であり、同人が権限ある代表者として本件競売開始決定正本の送達を受けたのであるから、その後代表者の変更又は送達場所の変更を生じたときは、裁判所に対してその旨の届出をすることにより、容易にそのような不利益を避けることができたのである。従って、抗告人主張の事実があるとしても、本件競落許可の決定を違法ならしめるものではない。
三 よって、本件抗告を棄却することとして、主文のとおり決定する。
(裁判長判事 杉山克彦 判事 横山長 三井哲夫)
<以下省略>